債券市場は堅調、円相場は反発
30日朝の国内債券市場では、先物価格が上昇し、リスク回避の流れが続いています。中心限月6月物は前日比30銭高の139円25銭で寄り付き、買い先行の展開となりました。背景には、29日の米経済指標の弱さに伴う米長期金利の低下があります。米10年債利回りは前日比0.06%低下の4.42%で終了し、債券価格の上昇が国内にも波及しています。
特に、1~3月期のGDP改定値で個人消費が下方修正され、米新規失業保険申請件数も予想を上回ったことで、米景気の鈍化を意識する市場参加者が増加。安全資産とされる日本国債への資金流入が強まりました。
一方、総務省が30日発表した5月の東京都区部のCPI(生鮮食品除くコア指数)は、前年比3.6%上昇と市場予想(3.5%)を上回りました。日銀による追加利上げへの思惑が再燃する内容であり、債券相場の上値を抑える要因となっています。
さらに、米国際貿易裁判所が「トランプ関税」の多くを違法と判断したことを受け、米連邦控訴裁は29日、その判断の一時停止を決定。この司法判断がもたらす米通商政策の先行き不透明感がリスク回避ムードを高め、株安と債券高を誘発しています。
為替市場でもこの影響は明白です。29日のニューヨーク外国為替市場では、円相場が一時1ドル=143円90銭台まで反発。東京時間の安値146円台から2円以上の戻しを見せました。米通商政策に対する先行き不透明感や、米景気の減速、さらには財政赤字拡大への懸念がドルの下押し圧力となっています。
JPモルガンは今回の司法判断について「米通商戦略の一時的障害にすぎず、戦略自体の破綻ではない」との見解を示していますが、トランプ政権の動向に対する市場の読みづらさは高まっています。ドル安・円高のトレンドは、短期的には強まりやすい地合いです。
また、FRBのパウエル議長に対し、トランプ前大統領が「金利を下げるべき」と伝えたとの報道もあり、金融政策の先行きに対する投資家の思惑が交錯しています。利下げ期待が生まれる一方、米財政悪化による金利上昇圧力も存在し、方向感の見定めが困難な局面です。
シカゴ連銀のグールズビー総裁が「関税という脂肪層を取り除けば、米経済の強靭な筋肉が見えてくる」と述べたように、政策の正常化と景気の健全性を切り分けて評価する視点も求められます。
通貨オプション市場では、円高リスクへの備えが継続。ドルのプットオプション価格は再び上昇し、リスクリバーサルも高止まりしています。金利差を狙った「円キャリー取引」への意欲は乏しく、投機筋も慎重な姿勢を崩していません。
総じて、現在の市場は「債券高・円高」というリスク回避の典型的なパターンにあります。今後は、日銀の金融政策スタンス、米国の通商戦略、そして中長期のインフレ見通しが焦点となります。
株式会社アイリンクインベストメント
岩本壮一郎

