日曜日, 2月 15, 2026
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トランプ政権の通商戦略に司法のメス、米裁判所が関税の大部分を違法と判断

米国の通商政策に激震が走りました。米国際貿易裁判所は、トランプ大統領による一連の関税措置の大半について、法的根拠を欠くとして違法とする判断を下しました。具体的には、1977年の「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を中国、カナダ、メキシコなどへの関税に適用したことについて、同法の目的を逸脱しており、憲法上問題があると断じたものです。

この判決は、トランプ政権が第1期の柱とした「アメリカ第一主義」に基づく貿易政策に対して、極めて重大な打撃を与える内容です。もし最終的に判決が確定すれば、該当する関税措置はすべて取り消され、米国の対中関税政策は大きく見直されることになります。

現時点では連邦政府が判決に対して控訴の意向を示しており、今後は連邦巡回控訴裁判所、さらには最高裁の判断にゆだねられる見込みです。実際、政府は早くも控訴の手続きに着手し、連邦高裁は判決の効力を一時停止する判断を下しました。ただし、この効力停止がどの程度の期間継続されるかは明示されておらず、司法手続きの行方に市場関係者は注目しています。

仮にこの違法判断が最終確定すれば、中国への30%追加関税、カナダ・メキシコへの25%関税、その他多くの国への10%関税が取り消されることになり、米国および世界の貿易構造に与える影響は計り知れません。すでに市場ではこの報道を受けてリスクオンの動きが広がっており、29日のアジア株は日本や韓国を中心に軒並み上昇しました。米株先物も堅調に推移し、米国債利回りは上昇傾向を維持。為替市場では円とスイスフランが売られ、ドルは高止まりしています。

ただし、この一連の司法判断がトランプ氏の通商政策そのものを根底から覆すものになるのか、あるいは単なる一時的なハードルに過ぎないのかについては、見方が分かれています。ホワイトハウス報道官は「国家の緊急事態への対処は、選挙で選ばれていない判事の判断によるべきではない」と司法判断に強く反発しました。

トランプ大統領も自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、「この判決は誤りであり、政治的なものだ。最高裁が速やかに覆すべきだ」と怒りをあらわにし、最高裁での勝訴に自信を見せました。

さらに、トランプ政権幹部もこれに追随する発言を行っています。ナバロ大統領補佐官は「関税政策は米国の製造業と雇用を守るために揺るがず続ける」とし、ラトニック商務長官も「控訴で勝つ見通しは十分にある」と主張しています。

背景には、トランプ政権がこれらの関税収入を減税の財源として計算している事情があります。関税撤廃が実現すれば、約3兆8000億ドル規模と見積もられる10年スパンの減税政策の財源が揺らぎ、財政赤字拡大懸念も一段と強まります。加えて、通商交渉における「関税カード」が封じられることで、米国の交渉戦術にも大きな制約が生じる可能性があります。

国際社会もこの動きに強い関心を寄せています。日本政府は林芳正官房長官が「判決の内容と影響を精査し、適切に対応する」とコメント。オーストラリアのファレル貿易相も「不当な関税の撤廃を強く求めていく」と発言し、対米関係における通商の再構築を示唆しました。

さらに、米英間で今月合意に達した貿易協定も、今回の判断によって法的な見直しが迫られる可能性があるとみられています。元WTO判事で米通商代表部(USTR)元法務顧問のジェニファー・ヒルマン氏は「貿易交渉のための関税行使は違法との判決は極めて重い。通商政策のあり方を根底から問い直す契機になる」と指摘しました。

法的な論点において、IEEPAに代わる包括的な通商権限は他に存在せず、トランプ政権が関税を通じて外交・経済戦略を展開する上での選択肢は大きく制限される可能性があります。

この問題は今後、最高裁による司法判断に加え、米国大統領選における政策論争の争点にも発展していく可能性があります。通商戦略の方向性が再び問われる中、投資家・企業・各国政府の動向は一層流動的になっていくと見られます。

株式会社アイリンクインベストメント
岩本壮一郎

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