足元の日本株市場で、私がかなり警戒して見ているものがあります。それが、信用買い残の異常な積み上がりです。
東京証券取引所が発表した3月19日時点の信用買い残は、東京・名古屋2市場合計で5兆8025億円に達しました。これは2006年2月以来、およそ20年ぶりの高水準です。しかも、増加は3週連続。前週からさらに830億円増えています。

この数字が何を意味するのか。
単純に言えば、下がるたびに個人投資家が押し目買いを入れ続けているということです。一見すると、押し目買いがしっかり入っているのは相場にとって良いことのようにも見えます。しかし、私はむしろ逆に見ています。今のこの状況は、相場の下支えというより、急落予備軍がたまり続けている状態に近いからです。
信用買いというのは、相場が上がる局面では確かに追い風になります。ところが、相場がもう一段下に走ったときには、一気に性格が変わります。含み損が膨らみ、追い証が発生し、耐えきれない玉が投げに回る。その投げがまた株価を押し下げ、さらに次の投げを誘う。こうなると、買い残は支えではなく、下落を加速させる燃料になります。
私は、今のこの信用残を見て、まさに信用爆弾だと思っています。
今のマーケットは、ただでさえ不安材料が多い。中東情勢、原油高、金利上昇、プライベートクレジット問題、サプライチェーン不安。どれか一つでも重いのに、それが重なっている中で、信用買い残だけが高水準で積み上がっている。これは、かなり危うい構図です。
しかも怖いのは、まだ多くの投資家が「そのうち戻るだろう」「ここは押し目だろう」という発想で買っていることです。
もちろん、相場はいつでも反発する可能性があります。ただ、今のように地合いが不安定な局面で、信用買いが高水準まで膨らんでいるというのは、反発の土台というより、崩れた時のエネルギーが大きいということでもあります。
相場というのは、上がるときはゆっくりでも、下げるときは一気です。そして、その一気の下げを生むのは、たいていこうした需給の歪みです。
日経平均はまだ見た目には保っているように見えるかもしれません。しかし、その裏側では、買い余力がどんどん使われ、逃げ遅れ予備軍が積み上がっている。これを軽く見るべきではありません。
私は、今の相場で本当に怖いのは、材料そのもの以上に、その材料をきっかけに信用の投げが連鎖することだと考えています。要するに、今の日本株市場は、どこで急落が起きてもおかしくない燃料を抱えた状態にあるということです。
この信用爆弾がいつ炸裂するのか。まだ断定はできません。しかし、少なくとも今は、楽観よりも需給の悪化を重く見るべき局面だと、私は見ています。
株式会社アイリンクインベストメント
ストラテジスト 岩本壮一郎

